アルツハイマー病に対して
超音波を照射することで
異常なタンパク質を除去できる。
そして
症状がよくなる。
まだマウスレベルですが、
着実に研究が進んでいます。
光免疫療法の場合には近赤外線ですが
超音波の場合はなにが
起るのでしょうか?
今回は初めて
アルツハイマー病の患者さんに
対して超音波がためされて
副作用がほとんどないと
「安全性」が確かめられました。
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アルツハイマー病治療は前途多難
先月2019年4月に
アデュカヌマブの最終治験が
中止されました。
もっとも有力視されていた
抗体治療法であっただけに
残念です。
抗体療法の限界は
脳内へ抗体が
ほとんど届かないことが挙げられます。
脳にはバリアがあるのです。
このバリアを
緩くする方法の一つが
超音波です。
経頭蓋MRガイド下集束超音波治療
Magnetic resonance-guided focused ultrasound
(MRgFUS)
以後
この超音波治療を
略して「FUS」とします。
FUSを照射して
抗体を脳内に入れやすくしたり
ガンの場合には
抗ガン剤を効率よくいれたりすることが
計画されています。
今回
初めてアルツハイマー病患者さんに対して
FUSが試されました。
人数は5人と少ないですが
今後
積極的に
試してみる価値がありです。
Nat Commun. 2018 Jul 25;9(1):2336.
doi: 10.1038/s41467-018-04529-6.
Blood-brain barrier opening
in Alzheimer’s disease
using MR-guided focused ultrasound.
カナダ・トロント大学からの研究です。
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FUSで異常蓄積たんぱく質が減るのはどうして?
1つ確かなのは
FUSが
脳と血管に影響を与えていると言うことです。
もう少し具体的に書くと
通常、
脳は硬い骨で守られています。
さらに
血管内からも脳へは
なかなか入れません。
どこからも
容易には
脳内に入れないようになっています。
これを「脳血管バリア」といいます。
脳に外部の環境が入り込むと
致命傷となるからです。
超音波FUSにより
脳血管バリアが
一時的に緩くなるということです。
そして
また24時間後には
脳血管バリアが
元に戻っています。
アルツハイマー病の方では
アミロイドβやタウといった
異常なタンパク質が溜まっています。
これを脳血管バリアが緩くなることで
排出機能が高まって
異常タンパク質が
減っていると考えています。
マウスレベルでは
症状の改善も確かめられています。
Combined effects of scanning ultrasound
and a tau-specific single chain antibody
in a tau transgenic mouse model.
Brain 140, 1220–1230 (2017).
グリンパというリンパ管が
深くかかわっているかもということです。
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グリンパとは?
最近
グリアとリンパ管が
脳内でかなり密接に関係していると
いうことがわかってきました。
つい先日まで
私も知らなかったので、
今勉強中です。
グリンパといいます。
おもしろい響きなので
言葉だけでも
覚えておいてください。
今後
テレビや記事にも
多く出てくるようになると思います。
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FUSの治療の値段は?
FUSは
薬剤抵抗性の本態性振戦を対象とした
治療に用いられています。
FUSでは頭蓋骨や脳を
傷つけることはありません。
まず
MRI画像を用いて
治療位置を決定します。
そして
超音波を使って脳内の原因となる場所に
超音波のエネルギーを暴露して、
患部を熱凝固させます。
値段は
入院と治療費合わせて
約200万円程度はかかりそうです。
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FUSの副作用は
超音波によって加熱するので
それに伴う不快感がある場合があります。
しかし
痛みを感じることはありません。
また
たまに手術中や手術後に
頭痛をある場合があります。
これは照射された場所が
わずかに腫れてくるために関連していると思われます。
また
多少めまいや吐き気などを感じる方もいますが、
一次的なもので
気にすることはありません。
またたまに
痺れ感やチクチク感などが出る方もいます。
これも数日内に解消されることが多いようです。
まとめると
論文にも書いてあるように
FUSには
副作用はほとんどありません。
ただし
長期にわたって
どのような影響があるかは
まだ詳細には調べられていません。
今後の課題かと思われます。
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